「Barぶきみや」のバーちゃんin Hachi(鉢)

絵本と木の実の美術館投稿日:2013年09月26日

十日町市の山間、すり鉢の地形に位置する集落「鉢」。村の真ん中に残る木造の旧校舎はその姿を残し、「絵本と木の実の美術館」として佇んでいます。この夏は、ジャンル・国境・世代を超えて世界的に活躍するヴォイスパフォーマー、おおたか静流さん(以下静流さん)を迎え、「おおたか静流大博覧会~シズリンのユートピア~」を2ヵ月間開催しました(2013年7月20日〜9月23日)。

自称「絵本と木の実の美術館の宣伝部長」を名乗る静流さんと田島征三との出会いは1995年頃。東京都西多摩郡日ノ出町で、産業廃棄物処理場建設反対運動の現場に静流さんが訪れたのがきっかけでした。その後長い時を経て交流が続き、今年、2人の想いがひとつのカタチになったのでした。

今回は、展覧会場に2人の人がいて成り立つ企画でした。常々「村の人にもっと美術館の内容に興味を持って関わってもらいたい」という思いがあったので、さっそく声かけまわり。鉢の石仏様を守る女性たち(ばあちゃん)の集まりにおじゃまして説明すると、ぽかんとするばあちゃんたち。でも、その中で6人のばあちゃんが手を挙げてくれました。内心安堵したものの、いざやってみて「こんなこと、おわたちにゃできねぇ!」と嫌がるかもしれない…と不安も消えませんでした。


photo:Osamu Nakamura

展覧会スタート!「瀬戸内国際芸術祭2013」で田島征三が大島で出品している「青空水族館」にちなみ、海の中で博覧会が開かれているという設定。そして、お客さん自身が主役です。まずは「こえや」で声を披露してもらい「シズリン通貨」をゲット、通貨を手に海底に潜む竜宮城へ足を踏み入れると、「Barぶきみや」「くじや」「涙本舗こくはくや」などあやしげな店が立ち並びます。この「Barぶきみや」の店員として、ばあちゃんに活躍してもらうのです。


photo:Osamu Nakamura

薄暗い店内の奥のカウンターにばあちゃんが、まさに「Bar」に「ばあ」がいます。「おらたちは小心だから一人でなんていかんない」ということで、平日に2チームに分けて3人ずつ来てくれました。お揃いのTシャツを着て、白い眼鏡と髪飾りをつけて準備完了です。嫌がるどころか大はしゃぎ。お客さんが来るたび、大きな声で「いらっしゃいまぁーせー!!」、話に花が咲いて大盛り上がり。終わってみたら、「ああー、たぁーのしかったー!」と満面の笑みでした。お客さんにとっても、ばあちゃんとの交流は貴重で豊かな体験になったに違いありません。



ある日、「Barぶきみや」の店員でもある村の名物ばあちゃん、セキさん・コトさん姉妹が、長女のばあちゃん(93歳)と3人で美術館に来てくれました。「かざりたてや」で色鮮やかな衣装を着たら、華やかで美しい3姉妹に。長女のばあちゃんは一言「この村をでて55年、夫に死なれて35年、今が一番幸せ」と。小さくて細い眼がキラキラと輝いていました。

ばあちゃん大活躍ともう一つ、村の盆踊り復活も今年の大事な出来事でした。2009年以来、参加する人の減少で開催が見送られていた盆踊り。大地の芸術祭という新しい風を受け入れつつも、時の流れに逆らわず伝統が消えてしまうのは悲しい。そしてこの夏一番賑やかな日、静流さんをはじめ、廃材打楽器奏者として活躍する山口ともさん、ソウルフルなヴィオラ・ヴァイオリン奏者の向島ゆり子さんを迎えた「BACCA*GOHGI(ばっかごーぎ)な音楽会」の後に盆踊りの復活が実現しました。




校舎の片隅にしまい込んであった櫓(やぐら)が引っ張り出され、美術館のサポーターの方や地域おこし協力隊の方なども加わり、あっという間に完成。村人、作家、唄人、サポーター、スタッフ、その場には多様な人が集まっていましたが、心の向かっている方向は同じでした。

熱い1日が終わり、静流さんは東京へ帰るその時まで、「かざりたてや」でお客さんを飾り立てていました。みんなが笑顔でした。展覧会場での笑い声や唄が廊下に響き渡っていました。校舎に潜むオバケたちは、さぞかし喜んでいたことでしょう。

絵本と木の実の美術館 天野季子