作家・岩谷雪子さんと森をあるく

絵本と木の実の美術館投稿日:2014年05月17日

こんにちは、絵本と木の実の美術館スタッフの天野です。

2014年5月12日(月)〜15日(木)、今年秋の展覧会に出品して頂く作家・岩谷雪子さんが妻有に滞在しました。
岩谷雪子さんは植物を採集し展示作品の素材として使います。「植物」といっても可憐な花ではなく、普段目にもとめないような「野草」を使います。展覧会が決まると、事前に3回は赴き展示場所周辺の植物を採集します。地域によって植生が異なりますから、その場所に暮らしている植物好きな人の話を頼りに、採集時期を見定めます。今回は、雪が消えた後の新緑が美しい妻有で、芽吹いた植物を採集するため来てくださいました。



まずは、絵本と木の実の美術館が位置する鉢集落を巡ります。藤の種や種が入っていた殻、蕗(ふき)の芽吹いた後の穂、色々と見つけていきます。



次は、「森の学校」キョロロの研究員小林さんから教えてもらった橅(ぶな)の種を包む芽鱗(がりん)を探すため、松之山の大厳寺高原へ。 残雪がたくさん残っていて、びっくり。



よく見ると、雪の上がきれいなオレンジ色です。さらによく見ると、小さな羽のような薄いものが一面に敷き詰められています。これが、「芽鱗」でした。



目をこらし、きれいな状態で残っているものを一つ一つ、拾い集めてスーパー袋へ。一つ拾い上げると、芽鱗の内側に小さな虫が棲んでいました。こんな小さな世界に暮らしている命もあるのだと、小さく感動し、ひたすら採集。
芽鱗意外にも不思議で何気なく美しい植物に出会います。あっという間に時間が過ぎていきます。





採集した植物の名前を教えてもらうため、早速キョロロへ。絵本作家・舘野鴻(たてのひろし)さんの「絵本原画展『ぎふちょう』の世界」を拝見し、さっき観たばかりの残雪の上の芽鱗が描かれていて、感激してしまいました。



次なる目的は、「かたくり」。かたくりの花は妻有でも名物となっていますが、岩谷さんがほしいのは花ではなく、種を包んでいた袋。花が終わり種が出来て、その種が土に落ちた後の袋だけに焦点をしぼります。



かたくりの宿のスタッフに情報を聞くと、今が丁度見頃。それでは早すぎると岩谷さん。観てみましょうと、向かいます。群生地に行くと、白樺の林に小さな「かたくり」の花が一面に咲き誇っていました。きれい。残念ながら、花が終わっているものが一部あったものの、まだ種が落ちた後のものはなく、採集断念。しかし、ふと見つけた黄色い小さな花を発見。風に流されて飛んできたその花の軌跡を、必至に二人で拾い集めました。



これを採りたいと思うととれないもので、採ろうと思ってもいなかったものに出会うのが日頃なのだそうです。

小さな命の記憶を見つめ、不思議な感覚を覚えた数日間。岩谷さんの作品は、静かな空間の中に、物言わぬ小さな植物がひっそりと訴えかけてくるような緊張感をもっています。古い小学校の木造校舎で、どんな物語が生まれるのか今からたのしみです。

絵本と木の実の美術館 天野季子