「絵本と木の実の美術館」今年最後の10日間

絵本と木の実の美術館投稿日:2014年11月22日

11月も半分が過ぎ、色づいた木々も雪を待つばかりと装いを変えています。開催中の秋の展覧会「岩谷雪子・田島征三 ―雪深き地にて―」は、秋の風景にぴったりの深く静かな展示空間です。11月30日をもって今季の営業を終了するまで、あと約10日、みなさまをお待ちしています。

岩谷雪子さんは、普段目にとめることが少ない野草や雑木の葉を採集し、作品として甦らせます。接着剤をほとんど使用せず、植物のもつ力(編む、結ぶ、刺す、くっつける等)で作品を作っていきます。作品は思わず息を止めて眺めてしまうほど儚く、繊細です。





岩谷さんは展覧会が決まると、1年ほど前から何度も展覧会場に訪れ植物を採集します。その土地の植生を現地の人から学び、気候や季節とにらめっこしながら採集時期を見定めます。採集しても必ず作品になるとは限りませんし、また、探していた種類の植物でなくとも、たまたま出会った植物が作品になることもあります。



2014年5月、松之山の大厳寺高原には残雪がまだ多く、春の日差しに当たって雪がみずみずしく溶けてゆく音が聞こえました。岩谷さんと私は「ブナ」の芽燐(がりん)を探しに残雪の丘へ向かいました。ブナの原生林が多く生息する高原には、春を迎え芽吹いた新芽を覆っていた芽燐がひらひらと落ち、雪原をオレンジ色に染めます。近づいて凝視すると芽燐の中に虫が隠れていたり、普段気にしない「小さないきものたちの世界」が確かにそこにありました。



岩谷さんと共に植物を見ていると、色鮮やかでない物言わぬ植物がそれぞれに何か呟いているように感じます。そんな岩谷さんは、普段白塗りの壁で覆われたギャラリーでの展示が多いため、「小学校」での展示ということをとても意識して作品制作に取り組みました。



展示室の内1室は、展示用のパネルを全て取り除き小学校の教室の空間を生かした展示に。懐かしさや切なさが漂う、ここでしか成しえない作品空間が完成しました。





田島征三さんは、鉢で採集した花菖蒲やガマを使ったダイナミックな作品を展開しています。岩谷さんとは表現が対極的ですが、「植物と木の実」表現の根っこにあるものは共通しているように感じられます。



田島さんは、1969年~1998年まで東京都の西のはずれ西多摩郡の日の出村に暮らしていました。「半農半X」という暮らし方が今時言われますが、田島さんは先駆けて「半農半絵描き」の生活の中で、自然農法を軸に畑や田んぼを耕し、山羊や鶏を飼って生活していました。その土地に産業廃棄物処理センターが建設される計画が起こり、長年にわたり建設反対の運動を行ってきました。結果的に産廃施設は建設され、多くの生き物たちの棲家だった尊い森が消えました。反対運動は今も続けられています。



そして、田島さんは重病を患い入院、大きな手術を経て、日の出村には戻らずに静岡県の伊豆高原に引っ越しました。伊豆高原での生活を始めたころから、木の実を採集し作品にするという新たな表現方法を始めます。今回はその当時の作品を2点出品しています。「生命の記憶」が宿ると田島さんから語られる「木の実」。無数に集合したその姿は、大きな命のうねりとなって、観る者の心に流れ込んでくるようです。







今年は、夏に「ビオトープ」を造りました。半分は池にして中央に島をつくり、もう半分は来年から作付して田植えをします。田島さんが目指す、「生き物と自然と人が一緒に暮らすことができるアートな庭」に向けて、多くの方々といろんな考えを持ち寄りながら学び、豊かな場所にしてゆきたいです。そして来年の春には、待望の「ヤギ」の入学を予定しています!



今年は11月30日(日)で閉館します。今年もたくさんの方々が絵本と木の実の美術館を支え応援してくださいました。心から感謝いたします。最終日の30日は、皆さんと雪囲い作業をしてからみんなで今年のフィナーレを迎える予定です。 参加したい方、人も虫も動物たちも、みんな集まれ―!



絵本と木の実の美術館 天野季子


関連するイベント