Vol.4「名作の数々」

北川フラム投稿日:2018年08月15日

 あっという間に2週間経ってしまった。こういうお祭りも、舞台の現場も、準備の密度、大変さに比して、いったん始まってしまえば、毎日毎日はドタバタとして暮れ、まさに光陰矢のごとしである。鴨長明のように一点に座して、鳥瞰図的に世間を見るというわけにはいかない。

芸術祭の現在までの特徴は、
・アジア圏からの来客が多い。
・パスポートを買って奥地のある名作にまで足を伸ばせない。
・作品の内容については好評である。
・食の評判は相変わらず良い。

そこで、禁を破って、僕なりの作品の見方を記しておきたい。

毎日多くの取材を受ける。
「どういう基準でアーティストを選ぶのか?」
それに対して、
「面白いものを作ってくれそうなアーティストを選ぶ」、
「面白いとはどういうことか?」、
「今まで味わったことのない空間体験を与えてくれるものだ」、
「???」。

そこで例として2003年と2012年再演のミエレル・レーダーマン・ユケレスの雪上車のダンス「スノーワーカーズ・バレエ」と2003年の「真実のリア王」、2002年の中川幸夫の「花狂い」を挙げるが、これはその場限りのパフォーマンスで今は見られない。一日限りの作品も多い。


ミエレル・レーダーマン・ユケレス「スノーワーカーズ・バレエ」(2003年、2012年)

クリスチャン・バスティアンス演出「真実のリア王」(2003年)

中川幸夫「花狂い」(2002年 芸術祭プレイベント)

今見られるもので言えば、ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィンプロダクション「赤倉の学堂」、クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」、たほりつこ「グリーン ヴィラ」、ジェームズ・タレル「光の館」、古郡弘「みしゃぐち」、やきものギャラリー「うぶすなの家」、田島征三「絵本と木の実の美術館」、イリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」、リチャード・ディーコン「マウンテン」、青木野枝「空の粒子/西田尻」や「田の玉/白羽毛」、カサグランデ&リンターラ「ポチョムキン」、リチャード・ウィルソン「日本に向けて北を定めよ」、ジョン・クルメリング(テキストデザイン:浅葉克己)「ステップイン・プラン」など、歴史に残るであろう作品が、それぞれ異なった角度から私たちの五感を震わせてくれている。


ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィンプロダクション「赤倉の学堂」(2015年 / T321)

クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン「最後の教室」(2006年 / Y052)

たほりつこ「グリーン ヴィラ」(2003年 / K023)

ジェームズ・タレル「光の館」(2000年 / K005)

青木野枝「空の粒子/西田尻」(2009年 / N052)

 そしてまた、それは作品それ自体ということもあるが、そこに至る道、それが設置されている空間との応答関係をもって私たちに語りかけてくる。それがサイトスペシフィックな作品なのだろう。それは美術館やギャラリーという白い高い壁という実験室的空間とは違った複雑な社会的、歴史的な場での展開となっているのだ。


リチャード・ディーコン「マウンテン」(2006年 / D132)

(左)ジョン・クルメリング(テキストデザイン:浅葉克己)「ステップイン・プラン」(2003年 / Y026)、(右)鈴木五郎「かまど」(2006年「うぶすなの家」内 / T122)

田島征三「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」(2009年 / T173)

イリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」(2000年 / D001)

カサグランデ&リンターラ「ポチョムキン」(2003年 / N019)

 今日の収穫は酒百宏一の「みどりの部屋」だった。住民との葉っぱのフロッタージュと作家がこだわる小道具のフロッタージュが基本なのだが、部屋は地域の生活、博物館の趣をもっていて、今は草が生えているだけのスキー場での催事が地域のハレの場であったことの写真などが胸を打つ。またその部屋に至るまでの数十メートルの植物のトンネルは、ゴーヤやウリやひょうたんがぶらさがっていて楽しく美しい。おすすめです。十日町地域では、枯木又の途中の開発好明のかまぼこ倉庫、みかんぐみの「下条茅葺きの塔」、親水公園にあるドミニク・ペローの能舞台「バタフライパビリオン」、アントニー・ゴームリ―の「もうひとつの特異点」など名作が、新作への途中にあるのでぜひ寄ってみてください。



(上2つ)酒百宏一「みどりの部屋プロジェクト2018」(2006年-/ T392)

ドミニク・ペロー「バタフライパビリオン」(2006年)

開発好明「かまぼこフェイス」(2006年 / T139)

アントニー・ゴームリ―「もうひとつの特異点」(2009年 / T214)


北川フラム  8月14日


Photos by ANZAI, Gentaro Ishizuka, So Kobayashi, H. Kuratani, Takenori Miyamoto + Hiromi Seno, and Osamu Nakamura