Vol.10「ススめるけど、ススめないこと」

北川フラム投稿日:2018年09月08日

 会期も残り1/4になり、芸術祭ファンのなかでベストテン選びが喧しい。これは美術の楽しみ方としてよろしいし、何よりも美術の見方、感じ方を鍛えるのに実践的です。

 ある展覧会に行くと、買うとしたらどれを買うか?を考える。何しろ気力がいる。よく見る。深く考える。

 その作品は飽きないか?その作家はちゃんとしているか?その作家の代表作足り得るか?(場合によっては、値はリーズナブルか?)等々が頭のなかで格闘するのだ。

 美術は何よりも全身、五感で感ずるものだ。妻有はその楽しさがあるので人気がある。でもためにご自分でベストテンを選び、友人と議論してみたらどうでしょう?

 いつもよく回って新作のベストテンを送って下さる良寛研究家のA・H氏の報告によると、順不同でベスト6までは「ペリスコープ/ライトケーブ」「十日町高倉博物館―還るところ―」「裏側の物語」「方丈記私記展」「磯辺行久記念 清津倉庫美術館」「Welcome」でした。例えばのものとして挙げておきます。


シュー・ビン「裏側の物語」


バルトロメイ・トグオ「Welcome」


マ・ヤンソン/MADアーキテクツ「ペリスコープ/ライトケーブ」

 何故、こんな話をしたか?十日町高倉博物館(力五山)の入り方についてです。ここへは普通、国道252号線、国道403号線から仙田・室島橋を通るゆったりした道の案内をしていて、道路サインもそれしか出していません。しかしナカゴから「星と森の詩美術館」を通って、山道の県道75号線から入る山道をどうしても捨てきれません。あの七曲りもなんのその、眼下の絶壁に身もすくむ思いで運転し、峠からはるか下方に拡がる高倉の盆地に点在する家屋を見たときの驚きは何とも言えません。はるか昔、この地にやって来た先祖たちが、この盆地を選んだ理由がわかるというものです。


力五山「十日町高倉博物館―還るところ―」

 A級ライセンスくらいのしっかりとした運転技量をもち、七曲りの一車線しかない坂道をバックでも登れて、大型トラックとすれ違うことが出来る人に限って、この道から入ってください。出口に使ってはいけません。進退窮まっても誰も助けてくれません。しかし、ここは越後妻有路の醍醐味のひとつです。ここから入れば力五山の作品の魅力はますます増すし、この博物館を何とかしなければと思う人も出てくる筈です。ススめるけど、ススめないことのひとつです。

北川フラム  9月8日

photo/ Keizo Kioku, Osamu Nakamura

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