安部敏樹が北川フラムを丸裸に!「大地の芸術祭の初心-北川フラムの全てを剥ぎ取るー」対談レポート

2018芸術祭イベントリポート投稿日:2017年12月2日

ヒカリエ・リレートークの最終回はリディラバ代表の安部敏樹さんをゲストに迎えた北川フラムとの対談。タイトルは、ずばり「大地の芸術祭の初心-北川フラムの全てを剥ぎ取る-」。社会問題を学ぶツアーを組織する活動とともに、東京大学大学院の池上高志研究室に所属する複雑系の研究者でもある安部さんは、大地の芸術祭のオフィシャルサポーターをつとめています。かつてマグロ漁船で漁師をやっていたというユニークな経歴をもつ安部さんが多様な角度から打ち込む率直な質問を、北川がドライブで打ち返す、そのやりとりは、さながらスピード感あふれるピンポンの試合を見るようでした。


安部さんからの最初の質問は、「フラムさんは<日本の現代アート界で最も影響力のある人々>のトップにランクされているけれど、なぜ?」というもの。これに対し北川は「それは僕に批判を集めようとする人々の仕業(笑)。ただ、都市のものと思われていた現代美術を田舎でやりだし、大変だったが継続して続け、実際に地域が変わった。それが、日本だけでなく、都市と地域の落差を日本以上のスピードで経験しているアジアのいろいろな国・地域へも面的な影響力を持ち始めている。でも、西欧美術を金科玉条に祭り上げ、それを消化するだけだった日本の美術に対して、美術はもっと違う形で成立しうるという我々のスタンスは、今の美術界にとっては腹立たしいはず。自分は壮大なドンキホーテをやっているという感じ」と回答。安部さんからは、かつて高齢者自殺率がトップだった越後妻有の変貌への驚きが語られました。


次いで安部さんから、福祉と資本主義の狭間で陥る障害者アートのパラドクスについて質問が投げかけられると、話題はアートの価値はどのように生まれるのか、というテーマへ。モノ=動産アートの移動が価値を生むマーケットの時代から、サイトスペシフィックな不動産アート(芸術祭)を求めてヒトが移動する時代への転換が起こっている今、ツアー型芸術祭の先駆である越後妻有は、<生活を見、体験し、交流する>国連が提唱する「サステナブルな観光」への跳躍板をつくってきた、と北川と語ると、安部さんは「それはまさに世界平和をつくる方法。価値観が違う場所で一定の時間、体験させることをシステム化すれば平和が生まれるというのが僕の考え」と応じ、自身が主宰してきたスタディツアーの意図が明かされました。


さらに話題は、科学、宇宙の起源、自閉症、アルタミラ・ラスコーの壁画、共同主観、創造性の問題など、縦横無尽に広がり、いよいよ最後の質問へ。「芸術祭には、フラムさんが面白いと思っているアートを面白いと思う人が来ているのか、それともフラムさんが面白いと思うことは、普遍性があるから人が来るのか?」という問いを受けて、北川は「自分の中にある感覚は、割合は違っても他者も共有していると思っている。だから他者とつながることができる。それは<類>とは何かという問いにもつながる」と答え、今から50年前、美術を志した二十歳の頃、初めて山下洋輔さんのピアノに出合った時の衝撃を語りました。 「なんでもっと早くこのピアノを聴けなかったのか。田舎にいた幼い自分がこれを聴いていたら、自分の人生はもっと豊かに変わっていただろう」と思ったこと、こうした人の心を動かす音楽や美術の裏方をやりたいと強烈に思ったことが、今につながっているのだと。

「美術や音楽の凄さは人を変える。突然変異は起こりうる。今とは違う社会がありうるかもしれない。田舎の美術はそうした空間的体験を可能にするのです」 山下洋輔さんのバリケートの中での演奏の映像が流れる中、「50年前の感動を今も持ち続け、走り続けているフラムさんに勇気づけられます」と安部さん。刺激にみちた二人の対談で、2週間におよぶリレートークは幕を閉じたのでした。

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