原広司・西沢立衛・藤村龍至による「均質空間への疑義」対談レポート

2018芸術祭イベントリポート投稿日:2017年12月9日

11月18日は、来年の目玉となる企画展「2018年の<方丈記私記>」に焦点を合わせ、公募審査員でもある建築家の原広司さん、西沢立衛さん、モデレーターとして藤村龍至さんをお迎えし、「方丈」「均質空間」をキーワードにお話しいただきました。

入口として、藤村さんより紹介された堀田善衛の『方丈記私記』は、『方丈記』から鴨長明が生きた中世の社会を読み、作者の戦争体験を重ねて当時の社会を読み解いた書。そして2017年の今、『方丈記』はどう解読できるのか?という問いから対談がスタート。

原さんは、自身の出発点である「均質空間批判」から説明します。彼が設計をはじめた1968-70年頃は全共闘運動の全盛期でしたが、世界は同じもので構成され、あらゆるものが均質だという、ニュートンからの考えが強固にあり、原さんは疑問を感じます。なぜならアインシュタインの相対性理論が出ており、空間は同一ではなく、重力により空間や光は湾曲するという考え方が一般化していたから。しかし近代建築では同一性が重要な理念とされ、世界的には資本主義の拡大と建築の均質化が同時に起こっており、均質空間の批判は近代化の過程そのものを見直すこと。原さんは、超高層建築の均質性を崩さず、局所的に室内の気候を手元(=ローカル)で変えられる「空調する空間」で、均質空間の部分化を進めます。細かいものを突き詰めて見ていくと全体が見えてくる、この反転がローカリズムだと。

そして話は方丈記へ。鴨長明もまたローカリズムをもち、住居を四畳半まで縮小し、局所(=ローカルなもの)を探求することで住居の本質を見ようとしました。結果、内ではなく外の世界が見えてきたいという『方丈記』は、タイミングも表現も非常に優れた本だと原さんは言います。それをテキストとした今回の公募展「2018年の<方丈記私記>」に話題が進むと、実寸の模型を見せながら、「“私記”ってのはいいですよね。責任もたくなくていいってことですからね(笑)。あんまり本気になってこれを創ろうとすると大変で、予算の中でできるのかな?と思うので、色んな工夫をするといいなと思います。」と、会場の笑いを誘いました。

次いで、西沢さんが「森山邸」を実例として紹介。森山邸はさまざまなサイズの小さな箱が複数あり、何軒で1住宅か分からないようなユニークな集合住宅。設計当時、隙間空間が庭になったり、無地になったりと建築の中にそういうものがあるのが面白いと感じ、外にお風呂を置いたりして庭と箱の関係を色々試したとか。森山邸でもお風呂を小さくしていくと庭を感じたりと、縮小する過程で外が見えてくる感覚は非常に共感するそう。その経験を経て、藤村さんからの「今考える空間モデルのイメージは?」という問いに、西沢さんは「街(外)と建築(中)の空間が調和し、断続・連続して繋がっていく空間」と答えます。過去に手掛けた「EPFLラーニングセンター」は建物が少し浮いており、下からくぐって段階的に中に入っていくもの。この外と中が連続していくような作品やコルビジェのアプローチ方法も例に挙げ、街から建物にどう近づいていくかというのが面白いと話します。

原さんはこう締めくくります。「911テロでワールドトレード・センターが対象になったのは、髙くてシンボリックだからではなく、やり方は悪いが、世界は全て同じであるという考えへの異議申し立てだったのではないか。」「文化というのは、均質な世界はないんじゃないかな。それは基準であって、適度な気温や明るさがあって、そういうのがない世界は快適ではない。が、それがどこへ行ってもいつも同じかというとそうじゃない。絶えず変化していくもの。均質性は私たちの中や社会に浸透しているが、だからといって全て均質性に準じて生きなければならないのは嫌ですね。我々は常に矛盾の中に生きている。そのひとつに均質性があると考えたらいいのでは。」

最後に、「2018年の<方丈記私記>」展の応募者へのヒントを藤村さんから求められると、「境界は重要。内へ入っていこうとしたら外へ出ていったというのも、境界の仕組みが大切。若い建築家はやれることを沢山やろうとするが、シンプルにテーマを限定してやるのがよい」と原さん。西沢さんは、「身体的な空間と環境的な空間をどう繋げるのか。単に箱をつくるより、環境を感じられるものがよい。また建築の作り方を見ると、どんな発想でどうアプローチしどう作ったのかを感じるので、そこに面白さがある」とアドバイス。熱心にメモをとる学生の姿も目立ち、同日に開催された公募説明会でも沢山の質問が飛び交いました。どんな作品が集まり、どんな展覧会となるのか今から非常に楽しみです。

≫「2018年の<方丈記私記>」展公募情報

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