越後妻有里山現代美術館 MonETにて2023年より開催している連続企画展。会期毎にゲストキュレーターがアーティストを選定し、展覧会を開催します。
大地の芸術祭は、美術を契機に地域を活性化すべく活動を行ってきました。更なる地域に根ざした芸術祭にしていくため、地域と芸術の新しい可能性を探り、未来を担う作家と出会い、新たな協働を生み出していきます。越後妻有里山現代美術館MonETでは、ゲストキュレーターが広く今後の美術をひらいていくアーティストを選び、2か月ごとに個展を行います。2023年から長期にわたる連続企画展シリーズとして開催しています。
北川フラム(大地の芸術祭総合ディレクター)
【ゲストキュレーター】塚本麻莉(高知県立美術館主任学芸員)
【会期】2025年9月27日(土)~11月30日(日)祝日を除く火水定休
【料金】一般1,200円/小中600円
※料金には、越後妻有里山現代美術館 MonET常設展示と企画展示鑑賞料含む。
※共通チケット対象期間は、共通チケットで入館可
大野綾子は、キャリアの初期から一貫して石彫に取り組んできました。
古い歴史をもち高い耐久性を誇る一方で、扱いに経験と技術を要する石について、大野は「できないことの方が多い」と語ります。そんな石と向き合い続ける大野がこれまでに選んできたモチーフは、植物、昆虫、魚など、記号化された「重くない」ものが中心でした。石をあえて軽やかで解放的な造形へと仕立てることは、重い/軽い、硬い/柔らかい、男性的/女性的といった二項対立をほどき、素材にまとわりついた固定観念に抗うための試みにほかなりません。
本展では、家族をテーマとした新作を発表します。
展覧会タイトルに含まれる「かご」という言葉は、外部と隔てられた小さな空間、すなわち作家自身の家庭の営みをほのめかします。自分のほか、夫や子どもといった具体的な「あなたたち」をイメージしてノミを振るった結果、簡潔なフォルムを保ちつつ、作品には以前にない奥行きと重量感が備わりました。新たな展開では、悲喜こもごもの日常を共に過ごす家族という存在を取り上げたことによる個人的な実感に加えて、この社会で生きるわたし/妻/親としての多層的な心理が反映されています。
伝統的な石彫技法を繊細かつ現代的な手つきで問い直す大野の現在地を、ぜひこの機会にご覧ください。
あなたたちとのむ、かごの中
ヤマトシジミかヒメシジミチョウだって。
ベニカミキリムシ。
寝るところを作って、ご飯も添えないと。家族は、ある日突然始まり、いつのまにか、かたちを持ち始める。
虫かごにそっと入れた虫も、私も、私の家族も
その関係を観察し、記憶し、育てている。「のむ」ことは、共にあること。
呼吸、沈黙、もしくは、うるさすぎる時間。
それはいつもの食卓の上のことかもしれないし、隣の見えない壁の向こう側にもあるかもしれない。私の中にいる「あなたたち」と一緒に、かごの中からぬるりとした世界へチョロチョロと足を出したり。
そうしたらいつしか大きく蓋が開かれたりして。2025年7月
大野綾子
《みどりは草の色カマキリの色 a》2022年 深岩石・ステンレス、作家蔵 Photo:Kei Okano
【日時】9/27(土) 14:00~
【場所】越後妻有里山現代美術館 MonET 企画展示室
【参加費】無料(入館料に含む)
作家プロフィール
大野綾子(おおの・あやこ)
彫刻家。1983年埼玉県生まれ。2008年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。日常の風景や生活の中にある、当たり前と思われていることを懐疑的に見て再考することで、浮かび上がる“わからなさ”から新たな発見をしている。思い描くイメージの自由さの中で、石という物質の不自由さを手がかりにし、“わからなさ”が持つ言語を超えた一つ先を「かたち」として留めていく。近年の主な個展に「みどりは草の色カマキリの色」(2022、CADAN 有楽町 by KAYOKOYUKI・東京)、グループ展に「ところざわアートのミライ」(2023、西武鉄道 所沢駅・埼玉)、「タイムライン―時間に触れるためのいくつかの方法」(2019、京都大学総合博物館・京都)、「第7回大黒屋現代アート公募展」(大賞受賞、2012、板室温泉大黒屋・栃木)など。
ゲストキュレータープロフィール
塚本麻莉(つかもと・まり)
高知県立美術館主任学芸員。1989年大阪府生まれ。2014年東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻修了。2016年より現職。
保存修復の知識を背景に、「残すべきものは何か」を問いつつ、会場ごとの地域性や特性をいかしたキュレーションを行う。高知県立美術館では、2020年に高知ゆかりの作家を紹介する個展シリーズ「ARTIST FOCUS」を立ち上げたほか、2022年に同県出身の美術家・合田佐和子の回顧展を企画。美術館外の企画にも積極的に取り組み、若手・中堅作家の自主企画展を多数手がける。
Vol.1 2023年7月1日(土)~8月27日(日)
「マテリアルショップカタルシスの岸辺 十日町店 &『死蔵データグランプリ2022-2023』記録展」
作家:カタルシスの岸辺
ゲストキュレーター:椹木野衣(美術評論家)
Vol.2 2023年9月9日(土)~11月5日(日)
「版画報、道が動く」
作家:松元悠
ゲストキュレーター:保坂健二朗(滋賀県立美術館 ディレクター(館長) )
Vol.3 2023年11月18日(土)~12月24日(日)
「続・並行小舟唄 翠のうつわ」
作家:竹﨑和征+西村有
ゲストキュレーター:塚本麻莉(高知県立美術館主任学芸員)
Vol.4 2024年1月13日(土)~3月10日(日)
「リバース ストリング」
作家:田中藍衣
ゲストキュレーター:檜山真有(キュレーター/リクルートアートセンター)
Vol.5 2024年4月13日(土)~6月9日(日)
「腰が重い」
作家:出津京子
ゲストキュレーター:保坂健二朗(滋賀県立美術館 ディレクター(館長) )
Vol.6 2024年11月23日(土)~2025年1月13日(月祝)
「ここには危険がいっぱい」
作家:光岡幸一
ゲストキュレーター:檜山真有(キュレーター/リクルートアートセンター)
Vol.7 2025年1月25日(土)~2025年6月22日(日)【展示期間延長】
「無色の人」
作家:三宅感
ゲストキュレーター:椹木野衣(美術評論家)
Vol.8 2025年9月27日(土)~2025年11月30日(日)
作家:大野綾子
ゲストキュレーター:塚本麻莉(高知県立美術館主任学芸員)
Vol.9 2026年1月中旬~3月中旬
ゲストキュレーター:保坂健二朗(滋賀県立美術館 ディレクター(館長) )
Vol.10 2026年4月中旬~6月中旬
作家:宮坂了作
ゲストキュレーター:椹木野衣(美術評論家)
日時 |
Vol.8 2025年9月27日(土)~11月30日(日) 祝日を除く火水定休 10:00-17:00(最終入館16:30) |
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場所 |
越後妻有里山現代美術館 MonET |
料金 | 一般1,200円/小中600円 ※共通チケット対象期間は、共通チケットで入館可 ※料金には、越後妻有里山現代美術館 MonET常設展示と企画展示鑑賞料含む。 |