作品について

前回に引き続き下布川地区で行商＝物々交換を行った。今回は、インスタレーションと人々との交流の場として下布川地区コミュニティセンターに拠点を置き、40日程滞在した。お宅を訪問し自作小品と野菜などの物々交換をしたり、住民約100人の写真撮影をした。また多くの来訪者とも交流した。インスタレーション「記憶の部屋」は、この3年間の行商交流の体験から創られている。この部屋は雪囲い板をめぐらした薄暗い空間で、窓に透明フィルムに焼きつけたこの地区の自然や人物の写真をはめ込んだ。部屋の中央には杉の丸太72本をジャングルジム状に組上げ、それを天井にかけて布川の水の映像を投影した。人々が雪に閉じ込められた家の中で昔の記憶を辿ったり、春や夏の情景に思いを巡らせるように、来訪者もそれを追体験し、懐かしさを覚えるような安らぎの空間であって欲しいと考えた。