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特集 / ディレクターズコラム

大地の芸術祭あれこれ④(執筆5/3)

北川フラム(『美術は大地から』編集長 / 「大地の芸術祭」総合ディレクター)

4月29日から145日間にわたる「越後妻有 大地の芸術祭 2022」が開幕。それにあわせて、今回の新作や見どころや”あれこれ”を、総合ディレクター・北川フラムが綴る新連載「大地の芸術祭あれこれ」がスタート。

文:北川フラム

05 May 2022

待ちに待った≪大地の芸術祭≫の8回目が開幕しました。実行委員長の関口芳史十日町市長の挨拶は丁寧で力強いもので、感銘をうけました。関口さんは第1回時は収入役でしたが、その頃から子供さん連れで作品を巡っておられましたし、第4回目からは夫人も地元サポーターとして活躍。おそらく作品への造詣は深く、市長になられてから(2009年)は作品についてディレクターへの注文はなく、仕組み・方法についてはいくつかの調整はありましたが、文化庁や他の省庁との関係、今回の経団連の「地域協創アクションプログラム」との連携、中国・台湾での浸透、オフィシャル・サポーターとの関わりなどはその成果です。第8回まで地盤を固めてくれました。第9回展に向けてゆるぎない方向を相談していければと思っています。第3回目から物心両面でバックアップしてくれた福武聰一郎プロデューサーとともに本部会議をリードしてこられ、心から感謝しております。

関口芳史十日町市長(大地の芸術祭実行委員長)

開会式では、突然スピーチをお願いしたフランスのエコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)から前日日本入りした、故ジャン=リュック・ヴィルムートの同僚であるクレリア・ゼルニックにも感謝したい。彼女はヴィルムートの娘さんを連れて、ヴィルムート追悼の展覧会≪大地の芸術祭2000-2022 追悼メモリアル ― 今に生きる越後妻有の作家たち≫のために来てくれたのです。この追悼展シリーズはこの6カ月、2週ごとに12回、越後妻有に参加したが、亡くなってしまったアーチストの業績を顕彰し、偲ぶというものですが、ヴィルムートは2003年にまつだい「農舞台」の≪カフェ・ルフレ≫で、旧松代町の全集落の住民に四季を撮ってもらい天井の照明としてつくってくれました。地域住民とのコミュニケーション、住民の参加度も高いものでした。以来、東京藝大とボザールとの協働パフォーマンスにも喜んで参加してくれたし、来日100回を超えるという親日家でした。その作品も、私が感銘をうけたフランスはシャテルローの工場跡を使った《ふたつの塔のように》などのサイトスペシフィックなオブジェ中心のものからコミュニケーションを大切にするものに変化していきました。まさに≪大地の芸術祭≫的な大作家でした。

≪大地の芸術祭2000-2022 追悼メモリアル ― 今に生きる越後妻有の作家たち≫ 4/29-5/9 ジャン=リュック・ヴィルムート展 photo Nakamura Osamu

このシリーズの2回目は新潟の本間恵子さんで、以下、舟越直木さん、ジミー・ダーハムさん、藤原吉志子さん、中村敬さん、高野文彰さん、古郡弘さん、クリスチャン・ボルタンスキーさん、富山妙子さん、ホセイン・ヴァラマネシュさん、ブルーノ・マトンさんが続きます。小展覧会で限界があるとは言え、一人ひとりの想いを知っていきたいと思います。ぜひいらして下さい。ツアーも組まれています。今回のシリーズには組まれていませんが、この3月16 日に亡くなったBankART1929の池田修さん、眞板雅文さん、粟津潔さんらの業績も顕かにしたいと思っています。

さて開会式のことです。これも突然お願いしたミュージシャンの巻上公一さんが、最後に開会宣言をした桑原悠津南町長の前後に口琴をやって下さいました。ファンファーレのように。さすが世界的アーチスト! 全体を華やかに、しかし人間的に盛り上げて下さいました。ありがとう!

クレリア・ゼルニック(フランス)/ボザール(パリ国立高等美術学校)photo Nakamura Osamu

巻上公一さんによる圧巻の口琴演奏(photo Nakamura Osamu)

桑原悠津南町長(大地の芸術祭副実行委員長)

この日、松代の田野倉では石松丈佳さんがセルフビルドで空家を改造して住み、仕事をする場をつくり、ワークショップをやっていた筈です。≪楽暮(たのくら)D.I.Y.の家 iju≫です。前日私はお邪魔したのですが、東京からやってきて農業をやっている先達であり、隣人でもある渡辺正幸さんから山野草をいただきました。独活(うど)、こごみ、蕗の薹、コシアブラで、どれもとてもおいしかった。

石松丈佳「楽暮 D.I.Y.の家 iju」(4/29オープニングワークショップの様子)

その時石松さんから、5/7名古屋で、茂登山清文さんが兄上(茂登山東一郎さん)の展覧会でお話をされると伺いました。その日は私は瀬戸芸のツアー本番で伺えないのですが、ぐうっと身体をつきあげられる気がしたのです。最近は身体の具合が悪く、お会いする機会がないのですが、茂登山さんは京都でのガウディ展(1980年)の頃からの知り合いで、大地の芸術祭の初回の開幕日の真夜中に仲間を連れて名古屋からこちらに向かってくれていたのです。妻有の真夜中の細い道、嬉しく、心配だったことが昨日のような気持ちです。氏の元気でおられることを祈り、皆さんにそのお話のお知らせをいたします。

北川フラム

お知らせ

「絵画をみる 茂登山東一郎のコンポジションとマチエール」/ギャラリートーク

会期|2022年5月6日(金)-11日(水)12:15-18:00
会場|名古屋芸術大学アート&デザインセンター WEST(西キャンパス)
主催|名古屋芸術大学 芸術教養領域
共催|名古屋芸術大学
入場|無料
※芸術教養領域の授業「ビジュアルリテラシー1」との連携企画

<ギャラリートーク>
茂登山清文/名古屋芸術大学 芸術教養領域特任教授
5月7日(土)13:00-15:00
名古屋芸術大学アート&デザインセンター WEST(西キャンパス)

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