枯木メプロジェクトの立ち上げ当初から続く作品。2009年には円形の車田を作り、架木(ハザギ、徳などの農作物を干すための柱)にするため実生のクヌギを植えた。2018年、初めて車田に稲を植え、秋には立派に成長した稲梨木に稲糖を干すことができた。昨年は、枯木又地区在住の有志との協働で、自然農法による作に挑戦。6月上旬には、ササニシキの親品種で現在は希少なササシグレと、竜王権現社の横に立つ巨大な三本杉をイメージして黒米を植えた。木には蜜を求めてカブトムシやクワガタが訪れるようになった。「廃校となった枯木又分校に虫取りを楽しむ子どもたちの歓声を聞きたいものです」(作家コメント)。
素材:クヌギ、水、土、梢
枯木又プロジェクト立ち上げ当初から参加し、プロジェクトの代表も務める作家が今回注目したのは、生活を守る象徴である「屋根」と「枯木
又の人々」。屋根は、この土地の厳しい気候から人々を守る。人々は、冬の豪雪の中では「雪堀り」(除雪)を行って屋根を守る。枯木又集落の人々は、この土地を守り、厳しい環境でも倒れることなく生活してきた。膨刻の案山子のようでもあり、やじろべえのような姿はその人々を象徴している。タイトルの《悠々自適》は枯木又の人々の自立した精神と理念に敬意を表したものである。
素材:杉に彩色、クスに彩色、鉄、アルミ
石版画(リトグラフ)を通して世界を発見してきた作家は、今回新潟県内の石灰岩を用いて、枯木又の木々と自生するユリ、新潟県の海を描いた。「石版画で使用する石を求めて探し回った風景と、何千万年という時間をかけて石が見ていた風景が、版面で二重の風景として出会う」(作家コメント)。展示では、版画作品だけでなく、版となる石も合わせて公開。石を探し回った記録、石を加工している記録、枯木又の記録の映像(竜王権現社内)が流れ、これらが「動」のイメージとなり、版画の「静」とともにイメージの共振を起こした。
素材:石版画、石灰岩、映像
本作は作家自身の幼少期の経験が非常に重要なインスピレーションとなっている。言語が未習熟のまま他国に移り住んだ作家にとって、その世界は「無音映画のよう、ただし息苦しくも美しい光景でもあった」と語る。作家は、枯木又の風景を目にした際もその体験に通じる感動が呼び起こされたという。展示会場となった枯木又分校2階では教室と廊下が縄梯子のドローイングで繋がれ、それぞれの教室は漫画のコマ割りの中に入り込んだかのよう。彼女が作品のステートメントの最後に記載したのは「言葉のない物語の中に迷い込めますように」という願い。来場者にとって、幸福な迷子になれる体験をもたらした。
素材:ミクストメディア
作品番号 | T427 |
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制作年 | 2012 2009 2015 2018 2022 2024 |
時間 | 10:00~17:00(10・11月は16:00まで) |
料金 | [枯木又プロジェクト個別鑑賞料]一般600円、小中学生300円 (期間によっては作品鑑賞パスポートや共通チケットを販売) |
休館 | 祝日を除く火水定休、冬季 |
エリア | 十日町 |
集落 | 東枯木又 |
マップコード | 140162347*13 |
公開期間 | 2025/7/19-8/31の土日祝 |
場所 | 新潟県十日町市中条東枯木又(旧枯木又分校) |