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特集 / 作家インタビュー映像

越後妻有のサイトスペシフィックな作家たち

interviewed by 北川フラム

来夏に延期となった「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の新作が、この夏から先行公開中。リニューアルした MonET、農舞台に加え、上郷クローブ座やかたくりの宿などにも新作が登場した。それにあわせて、作家と北川フラムの対談や制作風景を記録した映像シリーズをスタート。映像は随時追加公開予定。

撮影・編集:山岡信貴(映画監督)

06 August 2021

Vol.1 名和晃平

「Force」(越後妻有里山現代美術館 MonET)Photo Kioku Keizo

越後妻有里山現代美術館 MonETの新作のひとつ。黒いシリコーンオイルの液体が多数の糸状となって天井から床に常時落下する。シリコーンオイルは重力に従って天地垂直に流れ続け、床に黒い池を形成する。時間と空間と物質のはざまに鑑賞者の視点が置かれ、視覚化された重力の様態を見ることができるインスタレーション作品。

プロフィール

名和晃平

彫刻家/Sandwich Inc.主宰/京都芸術大学教授。1975年生まれ、京都を拠点に活動。2009年「Sandwich」創設。感覚に接続するインターフェイスとして、彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸として、2002年に情報化時代を象徴する「PixCell」を発表。生命と宇宙、感性とテクノロジーの関係をテーマに、泡そのものが巨大なボリュームに成長する「Foam」など、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。近年では、アートパビリオン「洸庭」など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家/ダンサーのダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品「VESSEL」を国内外で公演中。2018年にフランス・ルーヴル美術館 ピラミッド内にて彫刻作品“Throne” を特別展示。

Vol.2 目

「movements」(越後妻有里山現代美術館 MonET)Photo Kioku Keizo

無数の小さな時計をムクドリの群れのように配置したインスタレーション作品。ムクドリの群れは、個々の意志によって自由に飛んでいながら、全体として1つの意志が存在しているようだ。個々の時計固有の意味と、ひたすらに回る運動としての全体。それらは、観る者の視点によって連動する。意味と無意味、主体と客体、個と公、それら両極の間の世界が、里山現代美術館に存在する。

プロフィール

アーティスト 荒神明香、ディレクター 南川憲二、インストーラー 増井宏文を中心とする現代アートチーム。個々の技術や適性を活かすチーム・クリエイションのもと、特定の手法やジャンルにこだわらず展示空間や観客を含めた状況/導線を重視し、果てしなく不確かな現実世界を私たちの実感に引き寄せようとする作品を展開している。代表作に、個展「たよりない現実、この世界の在りか」(資生堂ギャラリー、2014)、《おじさんの顔が空に浮かぶ日》(宇都宮美術館 館外プロジェクト2013‐14)《Elemental Detection》(さいたまトリエンナーレ2016)、《repetitive odjects》(大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018)、《景体》(六本木クロッシング展:つないでみる、森美術館、2019)、個展「非常にはっきりとわからない」(千葉市美術館、2019)、などがある。第28回(2017年度)タカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞、VOCA展2019佳作賞受賞。

Vol.3 ニコラ・ダロ

「エアリエル」(越後妻有里山現代美術館 MonET)Photo Kioku Keizo

シェイクスピアの戯曲「テンペスト」に登場する“エアリエル(嵐を起こしたり幻覚を見せたりする大気の精)”などからインスピレーションを受け制作。パラシュート布で作られた2つの吊り人形が機械仕掛けで動き、台座の上のドラムセクションがリズムを奏でる。エアー・アクチュエータが空気を送り気まぐれな風が吹くことで、予想もしない情景が目の前に広がる。

プロフィール

ニコラ・ダロ

フランス

1972年フランス、ル・アーヴル生まれ、現在はパリを拠点に活動。彫刻、インスタレーション、自動で動くオブジェ等、幅広く制作している。科学、歴史、神話、文学などを参照し、科学者と制作することもある。

Vol.4 中谷ミチコ

「遠方の声」(越後妻有里山現代美術館 MonET)Photo Kioku Keizo

「2018年、作品制作のために地域の方からの聞き取りをさせていただきました。雪深い時期に一軒一軒お邪魔すると、すぐに炬燵に招き入れられ漬物とお茶をいただきながらホコホコと緩やかな時間の中で、もしかしたらこのまま居眠りをしていっても許されるのではないかと思えるほどに暖かい優しい空気の中、鮮やかな昔話や幼い頃の思い出、お唄を伺った。親密で豊なそれぞれの記憶から生まれるイメージは真っ白な窓の外の雪原に投影される様でした。私はそのイメージをそのまま彫刻化し、上野公民館に個人的な祈念碑を制作しました。2021年、前回の様な訪問は叶いそうにありません。あの記憶に触れた時間自体が記憶となり、私はその糸を手繰り寄せています。コロナ禍で生まれた距離と、川の向こうで聞こえる声を重ねながら、イメージの実態を探るつもりです」(作家コメント)

プロフィール

中谷ミチコ

1981年東京都生まれ、三重在住。2010年VOCA展奨励賞受賞、2012年ドレスデン造形芸術大学Meisterschülerstudium 修了。物語性を含んだイメージを塑造し、石膏で型取り、原型の粘土を雌型から取り出し、空の雌型に透明樹脂を流し込み、そのモノの内側から彫刻を鑑賞させる作品を制作。平面と立体の間を行き来しながら、イメージの「不在性」と「実在性」、「彫刻の在り方」を問い続けている。2014年より祖父が住んでいた三重県の空家に引っ越し、工場を改装した「私立大室美術館」で毎年敬老の日限定で一日限りの個展を開催するプロジェクトを実施。2018年大地の芸術祭に参加。
≫オフィシャルサイト
Photo by Adam Dreessen

Vol.5 栗田宏一

栗田宏一「ソイル・ライブラリー/新潟」(越後妻有里山現代美術館 MonET)Photo Kioku Keizo

多種多様な土の宝庫、日本列島。大量の雨水や激流により石が砕かれ微生物が岩を分解しできる「土」に魅せられた日本全土で土を採集する作家が、新潟県内の土を展示。田や畑、崖などに露出した土を乾燥させ、ふるいにかけ、植物の根っこや炭化物、石や砂利を丁寧に取り除いた。新潟県の112市町村(平成の大合併以前に存在した)のすべてを網羅した、576種類。

プロフィール

栗田宏一

日本

1962 山梨県生まれ。1990年より日本列島の土の色合いの多様性に着目し、列島全域での土採集を始める。現在は活動を世界に広げ、フランスを中心に各地で展示を行う。越後妻有では2006年に参加。12年より越後妻有里山現代美術館にて常設展示。

Vol.6 カールステン・ニコライ

光と音の原理を応用して、混沌と秩序、運動と停滞の両極性を見せる作品。スピーカーが放つ低周波数によって水面を振動させ、広がる波紋に同調させたストロボの反射によってスクリーンに映し出される。人工的につくりだされる水面の波紋は、規則的でも不規則的でもあり、それゆえに秩序あるようで混沌ともしている。

カールステン・ニコライ「Wellenwanne LFO」(越後妻有里山現代美術館 MonET)Photo Kioku Keizo

プロフィール

カールステン・ニコライ

1965年生まれ、ベルリンを拠点に活動。科学や数学に深い影響を受けながら、多様なジャンルで作品を制作する。大地の芸術祭には2003年に初参加。12年には越後妻有里山現代美術館にWellenwanne LFOを制作。以降、恒久作品として展示されている。

Vol.7 河口龍夫

2021年、まつだい「農舞台」で2003年の施工以来親しまれてきたインスタレーション作品「関係-黒板の教室」をリニューアル。長年の展示によるダメージの補修に加え、机に内蔵される「関係‐教育」と、「黒板になった教材」の2つの新作シリーズが制作された。机の天板下の空間に、妻有の閉校した学校から集められた教材を使ったアートボックスを内蔵。アートボックスは音楽や理科など、教材のジャンルに沿ってテーマ付けされている。

机に内蔵される「関係‐教育」シリーズ(まつだい「農舞台」内) photo Kioku Keizo

プロフィール

河口龍夫

日本

1940年生まれ。1960年代から国内外で活躍する日本を代表するアーティスト。「見えること」「見えないこと」、そしてそれらの関係性をテーマに製作活動を続けている。作品は「見えるもの」、あるいはたとえ「見えないもの」であっても存在する確かな物質感やそこに流れる時間や空白、物の生や死を感じさせる。大地の芸術祭には2000年の第1回から参加。

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