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特集 / ディレクターズコラム

大地の芸術祭あれこれ②(執筆4/25)

北川フラム(『美術は大地から』編集長 / 「大地の芸術祭」総合ディレクター)

4月29日から145日間にわたる「越後妻有 大地の芸術祭 2022」が開幕する。それにあわせて、今回の新作や見どころや”あれこれ”を、総合ディレクター・北川フラムが綴る新連載「大地の芸術祭あれこれ」がスタート。

文:北川フラム

27 April 2022

今日(4/25)は渋谷ヒカリエ8/で<大地の芸術祭>と<瀬戸内国際芸術祭>の合同プレゼンテーションの会が催されました。一方は4月14日に既に始まり、片方は4月29日に始まる日本を代表する芸術祭で会場50席は一瞬で埋まり、オンラインは250人の参加でした。

目[mé]、名和晃平、アレクサンドル・ポノマリョフ(通訳:鴻野わか菜)という人気作家の登場です。約2時間、聴衆の緊張感、集中力がひしひしと伝わってくるような三者の話でした。ありがとうございます。

目[mé]は瀬戸芸の小豆島の迷路の街に2016年設置の空家の外側が内部にめくりこむ作品が、いわば蟻が上下左右どのようにも空間を拡げていくような考えで制作されたこと、今回の大地の芸術祭の作品《movements》がムクドリの群飛行や、その中の一羽一羽の生理がどうかかわっているかの関心によって、8000個の時計の秒針がどう群をつくるかやってみたこと等を話してくれました。目[mé]の創作作法を含めて、彼らの今後に私は興味を持ちます。

4/25ヒカリエでの合同PRイベントの様子

目「movements」(2021年)photo Kioku Keizo

名和晃平さんは、私からすれば最も正統的な彫刻家です。物質のもつ状態、成分、分子構造をを含めて検討し、現代彫刻の可能性を拓いてきました。大地の芸術祭のMonETでの作品は黒いシリコンオイルの性質と重力―引力の関係性の類まれな造形です。特に床面プールへの落下とオイルの表面のかかわりは美しい。更に2013年の犬島での《Biota (Fauna/Flora)》は、もともとあった民家を解体して梁や柱を使い、そこに微生物の細胞分裂と爆発的な増殖を思わせる作品であったこと、2016年のダミアン・ジャレとのコラボレーションによる《VESSEL》というダンスは7人のダンサーが頭部を見せず合体して変化する不思議なものでしたが、それも人体が人ではない動態になるという関心からきたものだと説明してくれました。氏が今後どのような展開を見せてくれるか興味深々です。

目「movements」(2021年)photo Kioku Keizo

名和晃平「Force」(2021年)photo Kioku Keizo

最後はロシアからポノマリョフのライブです。氏を紹介してくれた鴻野わか菜さんの通訳でしたが、昨年開催された千葉県・市原市の「いちはらアート×ミックス」における小湊鉄道五井機関区の作品が道、あるいは人類の進化であり、2009年のヴェネチア・ビエンナーレの《SUB TIZIANO》は潜水艦をアートに変えたものであること、2017年の南極ビエンナーレは13か国の77人のアーティスト、研究者、ジャーナリストが一艘の船に乗り、南極のそれぞれの場所に着岸し、作品を展示、パフォーマンスをし、きれいに撤去して巡洋する国境を超えた誰のものでもない、皆の土地で展開されたことを述べ、その展示を越後妻有の奴奈川キャンパスで行ったことを述べました。この厳しい哀しい時代にあってのアーティストの抑制された発言は多くの人の胸に届いたように思えます。

「南極ビエンナーレ – フラム号2」(2018年)photo Nakamura Osamu

<大地の芸術祭>、<瀬戸内国際芸術祭>は目[mé]の南川憲二さんが話してくれたように、この時代にあっても、だからこそ<美術>という日常生活に依拠した活動は続けなければならない、という考えによって実行されようとしています。瀬戸内国際芸術祭も大地の芸術祭も作品は充実しています。皆さんに楽しんでいただけるようしっかりと運営していきます。ぜひ作品鑑賞パスポートを使って廻ってください。食もグッズもなかなかです。

 

北川フラム

Installation view, Inujima “Art House Project” F-Art House, Okayama, Japn
Biota (Fauna / Flora), 2013, dimensions variable, mixed media, Collection of Benesse Holdings, Inc.

VESSEL kyoto, 2016, ROHM Theater Kyoto, Kyoto, Japan ©︎ Damien JALET | Kohei Nawa

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