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特集 / ディレクターズコラム

大地の芸術祭あれこれ①(執筆4/23)

北川フラム(『美術は大地から』編集長 / 「大地の芸術祭」総合ディレクター)

4月29日から145日間にわたる「越後妻有 大地の芸術祭 2022」が開幕する。それにあわせて、今回の新作や見どころや”あれこれ”を、総合ディレクター・北川フラムが綴る新連載「大地の芸術祭あれこれ」がスタート。

文:北川フラム

26 April 2022

待ちに待った「大地の芸術祭」の第8回目がこの4月29日に始まります。新型コロナの蔓延で1年延期された後での開催です。まだまだコロナウイルスはシャットアウトできていませんが、出来うる限りの対策をして皆さんに来ていただき、「行ってよし、来られてよし」の観光と感幸がともにある、地域の生活の誇りと知らない場所で新しい体験が織りなすお祭りになれたら!と思っています。

4月23日、「ヤギのしずかコース」の作品のいくつかを見て回りました。椛田ちひろの空家の1階、無数のボールペン描線が壁面を流れるなかに床面の川があって光に浮かびあがってきます。夏には出来る2階の白い山なみがどうなるか楽しみです。市ノ沢集落の河原を含めた散歩もお薦めです。

七和は新座集落の田畑を使って戦後に出来た新しい集落。それだからこそ結束力は凄く、雪対策に力を奮います。その象徴は樋熊鉄工所が開発した「クマ武」というスノー・ダンプ(除雪具)。深澤孝史さんはそのタワーを七和防災センターに建てました。地域の時間が伝わってくる空間です。

「越後妻有 大地の芸術祭 2022」
4/29(金祝)~11/13(日)全145日(※火水曜定休)

 

【ガイド&ランチ付き日帰りオフィシャルツアー(各種コースあり)】

「ヤギのしずかコース」
運行日:4/29(金祝)、5/1(日)、3(火)、5(木)、5/7(土)~7/23(土)の土曜
ツアー一覧はこちら

下条の元「みよしの湯」2階の大広間の壁・襖など空間全体に井橋亜璃紗さんが地域の皆さんが撮った写真をベースにしたテキスタイルプリントを制作しました。季節の花、動物、記念写真などが鮮やかな色彩のモンタージュで覆いつくされているのは良かったです。それらの組み合わせに愛情が感じられました。頑張りましたね。

驚いたのは河口龍夫さんの「農具の時間」。かつて使われていた鋤、鍬、鎌、こしきなど30点ほどの農具が上新田の公民館2階の黄色の部屋にさまざまな姿で吊り下げられている。不思議な、止まった時間のなかで、道具たちが動き出そうとしているような、いわば力を貯めているような浮揚感が漂っている場というのでしょうか。それもその筈、これらの農具は人がそのまま使えるような姿勢に吊られているそうです。農具にはそれぞれ河口さんらしく、植物の種子が鉛で封印されている見事なものでした。

ここは今まで、中国のシュー・ビン「裏側の物語」などの力作が展示されてきたところですが、ついにピッタリした空間に変容された感がありました。2009年から1階に設置されている大棟梁・田中文男文庫を使った韓国のカン・アイランの「天の光、知の光―Ⅱ」も生命をもって輝いていて素晴らしい。建物は生きていくのだと思いました。思い返せば今は亡き下条の、元十日町市教育長だった生越誠一さんが奥様とよく受付に入っておられたところです。私にとっては愛着のある場です。

シュー・ビン「裏側の物語」(2018年)photo Kioku Keizo

カン・アイランの「天の光、知の光―Ⅱ」(2009)Photo Miyamoto Takenori+Seno Hiromi

この近くには焼物の名手入澤美時、安藤邦廣による「うぶすなの家」があり、そこには世界的な折り紙作家の布施知子さんの作品が設置され、古郡弘さんの「胞衣―みしゃぐち」があり、みかんぐみ+神奈川大学曽我部研究室の「下条茅葺きの塔」が残り、フィリピンのキッドラット・タヒミックさんの作品「戦後のラブレター(イフガオの棚田から新潟の棚田へ、愛をこめて)」の名残りもあります。

丁度この日、地域皆で整備している神明水辺公園のドミニク・ペローさんの「バタフライパビリオン」も桜吹雪のなかに佇んでいました。皆さんの「天神囃子」の唄が聞こえてくるような気持ちの良い一日のツアーでした。

北川フラム

うぶすなの家」(2009)photo Yanagi Ayumi

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